日本バイオセーフティ学会理事長 井上 智                                                                                                  (東京農工大学 感染症未来疫学研究センター)

 日本バイオセーフティ学会(JBSA)は、実験室における病原体等や遺伝子組換え体およびバイオの最新技術等の取り扱いにおける安全管理、安全装置及び実験施設設計等のバイオセーフティに関する研究の推進と普及ならびにその向上に寄与することを目的に設立され、総会・シンポジウム、教育・講習会等(セミナー、トレーニングコース、海外派遣事業)、専門家の育成、会誌、ガイドラインの作成などの活動において多くの学術的業績や社会的な貢献がなされてきています。

 本学会は、アカデミアや民間の研究機関等で微生物及び動物実験を行う研究者、病原体等の取り扱い安全管理者、安全装置技術者、施設設備設計者、機器設備保守者、消毒作業者、病院・実験動物施設・微生物関連製造施設等の安全管理者、医師、獣医師、臨床検査技師および保健行政関係者などの多様なステークホルダーで構成されており、アカデミックなプラットフォームを利用してさまざまな観点から最新の研究と理論、技術についての学術交流が可能です。

 また、バイオセーフティおよび研究環境や実験室におけるバイオセキュリティ(DURC※1など)は生命・自然科学、感染症・公衆衛生学、社会科学、医学・理学・工学などの知見に支えられた学際的な領域であり、バイオセーフティを基盤にしてバイオリスクに関するあらゆる変化をとらえて科学的なリスクヘッジを可能にするバイオリスクマネジメント(BRM)についても多様な学問領域の科学的知見が必要とされる学際領域です。学会を構成する会員の多様な領域間でのリスクコミュニケーションによる相互理解を深化させることで必要な学術基盤をより強固にすることが期待されていると考えております。

 現代は、目まぐるしく変転する予測困難なブーカ(VUCA※2)の時代です。バイオセーフティはバイオリスクから社会を守る安心と安全の科学でありその文化を広く普及・啓発するコンバージェンス・サイエンス※3でもあります。バイオセーフティの科学的な理論と技術の研究および開発、実践的なリスク評価に基づくBRMの普及、人材の育成などによって、バイオリスクがもたらす危害を未然に防ぎまた危害の発生時における迅速かつ効果的な対応の向上に資することができれば幸甚です。

 バイオセーフティに関心のある方々の多数の参加とともに引き続き会員の皆様の積極的な関与とご協力を宜しくお願い申し上げます。

2026年7月

※1:DURC:Dual USE Research of Concern(利用の両義性)

※2:VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)

※3:コンバージェンス・サイエンス:学問分野の壁を越えて、課題解決に向けて集中的に統合する科学